System Direct Marketing Basic Theory And Implementation Skills By Isao Nakazawa

体系 ダイレクトマーケティング ― 基本理論と実践技術

最新の市場・技術環境に基づき、体系的・網羅的に著された、ダイレクトマーケティングの決定版。

中澤 功 著   ダイヤモンド社 発行  A5判上製  480ページ  4200円   TEL.03-5778-7240

本書は、月刊 「アイ・エム・プレス」連載 「ダイレクトマーケティング・グラフィティ」でお馴染みの中澤功氏の最新刊である。
 この15年間で、ビジネスの成功の基準軸が大きく変化。かつては、マスマーケティングによる大量生産、大量販売、すなわち「企業本位・製品中心」の考え方が当たり前だったのが、インターネット、携帯電話、デジタル放送などに象徴される情報通信技術の進化と、市場経済の自由化・ボーダーレス化による企業生存競争の激化により、「市場本位・顧客中心」に考えなければ、企業の成功がおぼつかなくなったという。本書は、そのような著者の市場環境認識と長年の実務経験・検証結果に基づき、正統的でありながら、次世代的なダイレクトマーケティングを発想・実践させるために必要なことを、すべて体系的に網羅した。
 学習者、実務家、経営者などさまざまな立場の人たちが、さまざまな目的で活用できるように、基本理論、実務知識、専門技術、参考事例の4部構成になっている。新時代のマーケティング・モデルとして、いわゆるダイレクトマーケターだけでなく、あらゆる業種業態の一般マーケターにもオススメの一冊。

ダイレクトマーケティングこそ、この時代を牽引するキービジネスシステム。

ビジネスモデルの進化が、ここから本格的に始まる。

インターネット、モバイル端末、デジタル放送などに象徴される情報通信技術の進化と、市場経済の自由化・ボーダーレス化による企業生存競争の激化により、大量生産・大量流通を志向する在来型マーケティングモデルが市場の実情に対応しきれなくなって、顧客情報のデジタル化とそれに基づくコミュニケーションのマルチメディア化そして流通のマルチチャネル化は、今やあらゆる企業における経営政策の必然となっている。これはとりもなおさず、データベースに基づくワントゥワンでインタラクティブなコミュニケーション・流通・顧客対応を基本原理とする「ダイレクトマーケティング」こそが、それを牽引する不可欠なキーシステムとなりつつあることを意味する。本書は、そのような著者の市場認識に基づき、正統的でありながら次世代的なダイレクトマーケティングを発想・実践するために必要なことのすべてを体系的に網羅したもので、長年にわたるこの分野での豊富な実務経験を持った著者ならではの、広さと深さで記述されている。

理論・実践・技術・事例――ダイレクトマーケティングに関するすべてを網羅、しかも著者の長年の実務経験に基づいているから机上の理論に終らない!

* よく理解できる体系的構成

* 概念と特性、原理と機能、適用目的、市場構造、販売モデル、経営目標、基盤システム、業務インフラなどの基本知識。

・  データベースマーケティング、CRM、レスポンス広告、ワントゥワンコミュニケーション、オファー、クリエーティブなどの実践技術。

* インターネット、放送、出版、カタログ、ダイレクトメール、コールセンター、店舗など、あらゆるメディアとチャネルの活用戦略。

* すぐに使える実用的内容

・ 戦略プランニング、商品開発、市場開拓、テストの組み立て、キャンペーン管理、顧客対応など、実務に対応した手順とポイント。
・ 事業計画、キャンペーンプラン、効果測定、結果集計、損益計算、収益効率分析など、そのまま使えるテンプレート。
・ 通販、リレーションシップマーケティング、マルチチャネル流通、テレビショッピング、ネットコマース、B2Bなど、学べる国内企業の成功事例。

本の内容

類書では深く掘り下げて記述されていないが、実際には最も必要とされる部分、
例えば
「ダイレクトマーケティングプランニング」
「キャンペーンマネジメント」
「メディア戦略」
「ダイレクトマーケティングアプリケーション」
等をも含めて、この分野の実務を長期に渡って続けてきた著者でなければ不可能な深さと広さで記述。

目次

  • 第1部 ダイレクトマーケティングの知識と理論
    • ダイレクトマーケティングとは何か
    • ダイレクトマーケティングのベーシックス
  • 第2部 ダイレクトマーケティングの実践
    • プランニング
    • 商品開発
    • 市場開拓
    • キャンペーンマネジメント
    • テストと損益管理の方法論
  • 第3部 ダイレクトマーケティングのスキル
    • メディアの手法
    • クリエーティブの作法
    • オファーと販売戦術
    • データベースマーケティングの技法
    • CRM-顧客関係最適化のシステム
  • 第4部 ダイレクトマーケティングの事例
    • ベネッセコーポレーション―基本と革新
    • ネスレジャパン―リレーションシップマーケティングの真髄 
    • ファンケルー永遠のベンチャースピリット
    • シュピターショップチャネルーTコマースの最先端を行く
    • ケンコーコムーインターネットの無限の可能性を生かす
    • アスクルーパートナーシップから生まれたWin-Winモデル
    • 終わりにー日本のダイレクトマーケティングへの提言
      • DMの原点に返る
      • 通信コストの壁を越えて
      • 過剰IT依存からの脱却

著者情報

中澤 功(ナカザワ イサオ)
1961年早稲田大学第一法学部卒業、日本リーダーズダイジェスト入社。マーケティング部門、事業部門の部長を歴任。
80年からは広告代理店に転じ、マッキャンエリクソン博報堂ダイレクトマーケティングディレクター、第一企画ラップ&コリンズ副社長、サーチ&サーチ副社長を経て、92年以降はマーケティング・コンサルタントとして活躍、96~2003年はベネッセグループのテレマーケティングジャパン国際ダイレクトマーケティング研究所所長、現在は同顧問。ダイレクトマーケティング戦略ラボ代表、法政大学経営学部非常勤講師。広告電通賞選考委員、ダイレクトマーケティング学会会員でもある。
わが国のダイレクトマーケティングの草創期から、一貫して最先端を歩み続け、1980~91年までは、(社)日本ダイレクトメール協会で教育・国際担当常務理事を務めるなど、業界の発展にも大きく貢献した。
講演や執筆活動も数多い

関係情報

「マクロ・ダイレクトマーケティング論」講演アジェンダ(抜粋)

・マーケティング視点の変化と構造の多様化
・進化する実態
・3つの適用側面
・拡大する概念範囲
・推進プロセス
・メディア・フォーメーション
・ハイブリッド流通
・顧客情報収益化
・マクロ・ダイレクトマーケティングの課題

ダイレクトマーケティング戦略ラボ
代表 中澤 功氏

“企業本位・製品中心”→“市場本位顧客中心”

第12回DMフォーラムより
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「体系ダイレクトマーケティング」
~出版記念講演~
「マクロ・ダイレクトマーケティング論」
ダイレクトマーケティング戦略ラボ 代表
中澤 功氏
1. マクロ・ダイレクトマーケティング
~体系ダイレクトマーケティング出版記念
本にこのようなタイトルをつけたのは、オーソドックスな理論・実践の書を目指したことによるが、実はその中にも、私自身がかねてから抱いていたダイレクトマーケティングに関する考え方を貫いている。それが、“マクロ・ダイレクトマーケティング”という概念。
あえて、“マクロ・ダイレクトマーケティング”と言っているのは、皆さんのそれぞれが関わっているダイレクトマーケティングというものをより広い視野で見て、お仕事の領域をより広げて行って欲しいと思うからで、今日、ダイレクトマーケティングというものを、それ自体の内側だけから見るのではなく、外側から全体を俯瞰するように見ることが必要と言いたいのだ。
なぜなら、今日のダイレクトマーケティングは、単に「通販」という流通・販売の手段としてだけでなく、また「ダイレクトメール広告」といったメディアミックスの一構成要素としてだけでもなく、伝統的なマスメディア広告と店舗流通をも含めたマーケティング全般に対する影響力を持つ、したがってその基盤に位置づけられるべき、“基本原理・アプリケーションシステム”として捉える必要があるから。
つまり私は、これまではお互いにフィールドが違うと認識し合っていたかも知れない“いわゆるダイレクトマーケター”と“いわゆるマスマーケター”の両方に、ダイレクトマーケティングというものを大きな視野で(つまりマクロに)見よ、と提唱しているのだ。
本日は、3つのパートに分けて話を進めたい。最初は、マクロ・ダイレクトマーケティングの「提唱の背景」、次に、その「概念・範囲」、そして、それらを実践するための「基本戦略」である。
2.マクロ・ダイレクトマーケティングの提唱背景
私がマクロ・ダイレクトマーケティングを提唱する理由は、“顧客中心・情報化”という、ダイレクトマーケティングの本来的な原理・システムこそが、ダイレクトマーケティングに限らない今の時代の市場環境に即応し、今のビジネスのあり方を牽引”するもの――と思っているから。その根拠として、3つのポイントを上げたい。
マーケティングは、“伝統的なそれ”から“今日的なそれ”へと、“必然的変化”を余儀なくされている。それは、“市場の競合環境の変化による、これまで標準ビジネスモデルの行き詰まり”と、もう一方で“情報技術の革新による、コミュニケーションおよび流通面での可能性の拡大”という基本背景に根ざして必然的に発生した、「マーケティング視点の変化」、「マーケティング基準軸の転換」、そして「マーケティング構造の多様化」ということになる。
3.マーケティング視点の変化
「マーケティングの視点」はどう変わったか。既によく言われていることだが、まずは、「市場シェア」から「ロイヤルティ」へという変化がある。市場シェアは確かに企業活動の成果を示す一つの指標ではあり、市場全体が成長している時には販売シェア拡大競争にコストを集中することに意味があるが、成長は無限ではない。競争が激化している市場では、「シェア」という“横への広がり”でなく、販売の結果獲得された顧客のロイヤルティという“奥行きの深さ”を追求すべく、視点を変える必要が生じる。その方が投資効率が良くなり、最終成果も大きくなる。
次は、「セールス」から「リレーションシップ」へという変化。つまり、その都度都度が区切りの“販売達成”というマーケティング目的から、継続性・反復性と双方向性を意味する“顧客とのリレーションシップ”構築という目的へと、戦略をシフトすること。その都度のセールスを、目的の終点とするのではなく“顧客関係づくりの起点”と考える。リレーションシップを形成・維持することが、長期的に見て最終成果を最大化する。
そして、「シングルチャネル」から 「マルチチャネル」へという変化だ。これは、市場でのコミュニケーションと流通において、“マス広告と店舗流通”(伝統的マスマーケティング)だけ、あるいは“ダイレクトコミュニケーションと無店舗流通”(伝統的ダイレクトマーケティング)だけにこだわってお互いを相容れないものと考えるのではなく、同じ市場・顧客に対するコミュニケーションおよび流通のチャネルを“複線化”すること。言い換えれば、異なるコミュニケーション・流通チャネルの間で“顧客を共有”すること。それが、両チャネルで市場を食い合うのではなく、むしろ“相乗効果”と“互恵関係”を生み出し、結局“市場のポテンシャルを最大限に引き出す”ことにつながる。
4.マーケティング基準軸の転換
「マーケティング」とは、Product(製品)/Price(価格・販売政策)/Promotion(宣伝・販促)/Place(物流・拠点)という“等価値の4つのP”で構成されると言われてきたが、実態は等価値ではなく、“企業本位・製品中心”の考え方で、基準軸はProductに置かれてきた。しかし今は、実態として“市場本位・顧客中心”でなければ、安定したビジネス経営は困難になっている。
つまりマーケティングは、“Product-Out”(製品が中心に位置、出発点となる)から、“Market-In”(市場が中心、さらにその「核」として顧客が位置づけられる)へという、基準軸の転換が必要になっている。
上図の「左」は、いわゆる4Pを私の考えで表現し直したもので、4つのPは等価値ではない。“製品が中心”になり、“企業主導の販売政策”に基づき、“単方向”の“広告宣伝”で市場に影響力を及ぼして“大量流通”を図ろうとし、誰であろうと売れさえすれば良いと考え、市場を“不特定多数”の“売込みの対象”としてしか見ていない。
これに対し「右」は、市場から“特定顧客を顕在化”し“データベース(情報基盤)化”して、それに基づいて“ダイアログ(対話)”のかたちでコミュニケーションを展開する。そしてProductは、“商品と販売政策が一体”になったものとして、“市場・顧客の意にそうかたち”で決定され、Promotionも、“コミュニケーションとインタラクション”というかたちで“双方向”でなされ、Placeすなわち“流通”も、“データベースとダイアログを通じて、Promotionと連動”するかたちでなされる。
これが、今日のマーケティングの必然的な“基準軸の置き方、発想のプロセス”だが、よく見るとこれは、まさに、“ダイレクトマーケティングの原理・システム”そのものにほかならない。左を「4P」というならば、私は右を「3P+2D」と仮称する。(これを「中澤モデル」と言ってくれる人もいる)
5.マーケティング構造の多様化
マーケティングを、市場への「コミュニケーション」と商品の「流通」という2つの軸の組合せとして考えた時、かつては、“潜在市場での「マスコミュニケーション」(広告)と「店舗流通」”、“顕在市場での「ダイレクトコミュニケーション」と「無店舗流通」”の2つの組み合わせが典型。だが今は、この2軸のクロスによって生じるマーケティングの構造はもっと多様化。図示するとよくわかる。
マーケティング基準軸の転換 < 4 P > 物流・決済 価格政策 流通プロセス商品計画“企業本位・製品中心” (PRODUCTOUT)マーケティング構造の多様化 不特定市場 コミュニケーション 特定市場 コミュニケーション 店舗流通 無店舗流通 マスコミュニケーション 非識別 集客・販売 商 品 店頭 引渡 ダイレクトコミュニケーション ダイレクトレスポンス 商 品 直接 宅送 マスコミュニケーション ダイレクトレスポンス 直接識別 集客・販売 ダイレクトコミュニケーション
横に「コミュニケーション軸」をとり、左方を“不特定(マス)市場”、右方を“特定(ダイレクト)市場”とし、縦に「流通軸」をとって、下方を“店舗”、上方を“無店舗”とすると、2軸のクロスによって4つの区分が形成される。その左下の区分が、既述した「伝統型マスマーケティング」の領域ということになり、ここでは、「マスコミュニケーション」(広告)によって、市場の一人一人は識別されない状態で“店舗”への「集客」とそこでの「販売」がなされ、「商品流通」は“店頭での引渡し”というかたちになる。
これに対して右上が「伝統型ダイレクトマーケティング」の領域。「ダイレクトコミュニケーション」により、「注文」または「見込」という「ダイレクトレスポンス」を獲得、商品流通は“直接宅送”。

“市場本位顧客中心”
直接識別 集客・販売

この“無店舗流通(通販)のシステムは、マスコミュニケーション(広告)の結果としてのダイレクトレスポンスにも適用、“伝統型ダイレクトマーケティング”の領域は図の左上の部分にも拡大する。(いわゆる「広告通販」あるいは「メディアダイレクトレスポンス」)
メディア広告からのダイレクトレスポンスはまた、無店舗流通だけでなく、“個々に識別された状態での集客・販売”というかたちで、左下の“店舗流通”の領域でも生かされる。
右下の領域は、これら“マスコミュニケーション(広告)で獲得したダイレクトレスポンス”に基づく「反復ダイレクトコミュニケーション」によって、マス広告では不可能な、“個々に識別できる状態”での「店舗リピート集客・販売」が可能になることを表わしている。
このような組み合わせで、顕在市場での無店舗販売、潜在市場を顕在化する無店舗販売、潜在市場から個々を識別する店舗集客・販売、この結果顕在化した市場に基づく店舗リピート集客・販売という、ダイレクトレスポンスに基づく“4つの領域”のあることが判明する。私は、そのすべてを合わせて“今日的ダイレクトマーケティング”のかたちと考える。
この構造の“要”は「データベース」。マスをも含むあらゆるコミュニケーション活動の結果として、そのレスポンス情報を取り込んだデータベースを構築、それを店舗流通と連動させて活用することによって、「マスマーケティング」も「ダイレクトマーケティング」も進化する。
6.マクロダイレクトマーケティングの概念・範囲
私が「マクロ・ダイレクトマーケティング」を提唱し出している理由と、その背景が、ある程度わかっていただけたことと思うが、次に、「マクロ・ダイレクトマーケティング」とは、“概念”として規定すると、どういうことになるのか、それは、具体的には“何をすること”なのか、“マクロ”というけれども、既存のダイレクトマーケティングとくらべて、その“範囲”はどう違うのか――という話をしたい。
7.進化する実態
後に「ダイレクトマーケティング」と呼ばれるようになったビジネスシステムの原型は、実態として既に1世紀前から存在する。それが一定の体系をなすに至ったところで、L.ワンダーマンが、この呼称を提唱。以後、実態の進化と共に概念も段階的に拡大。
80年前後までの概念は、「個人消費者・個別企業が対象で、中間者を介さず直接接触・訴求し販売を実現」という、“販売方法”の意味に規定されていた。それが、実態としての適用目的の拡大に伴って、80年代後半ごろからは、「1つまたは複数の広告メディアを使う、いろいろな場所で測定できるレスポンスを発生させる、相互作用を及ぼしあう」という部分を加えて“マーケティングのほぼ全局面”を表わす用語として規定し直され、さらに90年代に入って、「注文、資料請求、来店などのかたちでのレスポンスを発生させることが目的」というように、その“レスポンス”の部分が、「商品の注文」(オーダー)、「資料・情報の請求」(リード・ジェネレーション)、「店舗その他の取引場所への集客」(トラフィック・ジェネレーション)など、さまざまなかたちになると解釈され、90年半ば以降には、それに「活動の結果がデータベースに蓄積される」という一文が加えられる。
そして2000年ごろから、情報技術の飛躍的進化に伴い、このデータベースを駆使する顧客関係形成・維持とそれによる収益追求の理論・システムである「CRM」が提唱され、それこそがダイレクトマーケティングの原理・システムだとして、ダイレクトマーケティングは「収益効率を最適化し、顧客を形成しブランドを構築する」ものと考えられるようになる(マクロ・ダイレクトマーケティングの概念と合致)が、この最後の部分は、まだ公認されているわけではない。
結局、“今日のダイレクトマーケティング”とは、実態として、“ここに掲げたすべてを含む”ものであり、下図は、その意味・概念の進化・拡大のプロセスを表わしている。
8.3つの適用側面
ダイレクトマーケティングは確かに、原型が「通販」という販売システムではあるが、同時に顧客形成のプロセスでもあり、単に“販売の反復・継続”のために適用するという側面だけからでなく、“顧客情報の獲得・利用”のために適用するという側面からも見る必要がある。
つまり、不特定多数の市場から販売活動に伴って顧客情報を取り込み、データベースとして特定市場化して行くという、“マクロな適用プロセス”で考えるということで、3つの側面がある。
先ずは「アクィジション」――“獲得”という側面。店舗であれ無店舗であれ、「販売」(オーダー獲得)というレスポンスに伴って、“顧客自身とその行動内容についての情報”を獲得する。
次が「プロモーション」――“推進”という側面。ダイレクトマーケティングは1回の販売で完結なのではなく、それに伴って獲得したデータベースを、“効率的な反復・継続販売”のための直接コミュニケーションに使うことにこそ意味があり、それを“推進”するプロセスを、こう呼ぶ。伝統的なダイレクトマーケティングでは当たり前のことで、このシステム・原理がマスマーケティングのROI改善のためにも適用され、ダイレクトマーケティングの適用範囲を拡大した。
そして今、ダイレクトマーケティングに限らず、ブランドに対する顧客のロイヤルティ形成によって企業の安定成長を図るためには、アクィジションやプロモーションだけでなく“顧客の維持”を心がけることこそが重要と認識されるようになり、顧客との関係強化を目的とする直接コミュニケーションプログラムにも、積極的な投資が行われるようになってきている。このような“販売・販促を直接の目的としない戦略的なダイレクトコミュニケーション”が「リテンション」だが、これも広い意味でのダイレクトマーケティングと私は考えている。
ダイレクトマーケティングは、顧客データベースを中心に置いたこのような“3つの切り口”から見ることによって、単に「販売」だけでも「広告」だけでもない、“マクロな適用側面”を持った「統合ビジネスシステム」だとわかる。
9.拡大する概念範囲
私の提唱している「マクロ・ダイレクトマーケティング」は、従来ダイレクトマーケティングとされてきた概念よりもかなり広義なものとしていることがこれまでの話から察していただけたかと思うが、一般的に認知されている既存のマーケティング概念との関わりにおいて“どんな位置づけ”になり、“どこまでの範囲”をカバーするのか、その概念領域について話したい。
拡大する概念範囲 伝統型
それを図示するため、縦にマーケティングの“戦略ポイント”軸をとり、上を「レスポンス/情報化重視」の方向、下を「認知度・ブランドイメージ重視」の方向とし、横にはマーケティングの“追求目的”軸をとって、左を「売上高/市場シェア追求」の方向、右を「収益効率/LTV追求」の方向とする。
そうすると、「伝統型マスマーケティング」という概念は、この左下の区分に入り、「ダイレクトマーケティング」も“伝統型”は、“レスポンス/情報化重視”ではありながらも事実上“販売中心・売上第一”であったことから、この左上の区分に位置づけられる。
そして、そのようなダイレクトマーケティングの“収益効率アップ”の必要からの“情報テクノロジー”の追求によって編み出された「データベースマーケティング」は、ちょうどこの位置(上部中央)になり、このテクノロジーを「伝統的マスマーケティング」の問題点(非継続性・ROI悪化)の補完のために適用した「リレーションシップマーケティング」が、マスマーケティングとデータベースマーケティングをリンクし、“シェア追求”と“LTV追求”の両方にまたがるかたちで、この位置(上部にも少しかかる下部中央)におさまる。
さらに、昨今の市場環境の変化によって、データベース運用での“顧客との関係管理”という側面が重視されるようになり、“情報通信技術の飛躍的革新”もあって、“収益効率/LTV追求”というこの位置(上・下部の中央右側)にふさわしい概念として「CRM」が提唱される。
「伝統型マスマーケティング」を除くこれら4つの概念をすべてカバーし、かつ「マスマーケティング」ともかなりの部分で相関しあうこの概念を、私は「マクロ・ダイレクトマーケティング」としている。
伝統型 マクロ
10.推進プロセス
「マクロ・ダイレクトマーケティング」とは結局、その“推進プロセス”をフローチャート化すると、次のようになる。
「企業のビジネスの長期安定成長のため」ということを“目的”とし、「マスマーケティングとダイレクトマーケティングの原理を相互補完的にリンクして市場からレスポンスを発生させる」ことを“第1段階の戦略”とし、「マルチメディアコンタクトセンターを市場・顧客との接触基地として、メッセージの受発信を一元的に管理」することを“手法のステップ1”、「さまざまなビジネス活動の結果として関係・取引客のデータベースを構築」、「CRMの技術システムを基盤としてデータベース上の情報を分析・理解・有用化」、「データベースマーケティングの技法を適用して収益効率の改善を追及」を、それぞれ“手法のステップ2、3、4”として、「発信・受信の双方向コミュニケーション性を持つワントゥワンメディアを通じる」という“第2段階の戦略”をとって、「無店舗流通チャネルに直結するかたちでダイレクトオーダー(直接注文)を獲得」、「店舗流通チャネルと連動するかたちでのダイレクトプロモーション(直接販促)を達成」という、“当面のゴール”を目指す。
そして“最終段階の戦略”として「販売・販促目的および関係形成・強化目的でのインタラクションを継続・反復」することによって、「取引・関係継続における顧客の“満足”を実現、“ロイヤルティ”を形成、“ブランド”への定着をはかる」という“最終ゴール”に達する。
11.マクロ・ダイレクトマーケティングの基本戦略
ここまで、私が「マクロ・ダイレクトマーケティング」というものを提唱するに至った“必然的な背景”、そしてそれを“理論的・概念的にどう規定”しているか――ということを話してきたが、ここからは、それを実践・適用し、事業経営上において成功をおさめるためには、基本的にどのような“戦略発想”および“視点”を持つ必要があるか――という話をする。
そして、このプレゼンテーションの最後では、「マクロ・ダイレクトマーケティング」の“今後の課題”についても言及する。
12.市場は1つ、チャネルはマルチ
本来顧客の側からすれば、自分がマスマーケティングの対象客だとか、ダイレクトマーケティングのターゲットだとか、企業の側から区別されるのは不愉快千万な話。企業はマーケティングの展開において、そんな妙な境界線を引かず、マクロで融通性のある考え方をする必要がある。
ビジネスの市場はマスとダイレクトで別々に存在するわけではなく、“顧客の利用チャネル”や“企業のコミュニケーションチャネル”の違いにかかわらず、存在するのは「同じ1つの市場」。したがってその市場で成功をおさめるためには、「コミュニケーション」も「流通」も、チャネル戦略はより“マルチ”に考えるべき。それには3つのポイントがある。
まず「メディア戦略」は、“複数メディアの連動と相互補完”ということがポイントになる。これは、単なる広告予算配分的“メディアミックス”や、認知度追求のためのIMC(Integrated Marketing Communication)ではなく、“市場情報の獲得”とその“収益化”という今日的目的達成のために“補完・相乗効果”を生む、“複数メディアの相関・連動”的な使い方が必要だということ。
また「流通戦略」は、“複線化と重層化”がポイントになる。これは、顧客の立場で考えれば、流通は「店舗」「無店舗」のどちらかだけでなく、複数(両方)のチャネルで対応すべきだということ。と言っても、単純並列ではなくて、“相関”しつつ“役割分担”し、“相互乗り入れ”できるかたちでなければならない。
ということは、“マルチチャネル戦略”の鍵は「データベース」であることを意味する。伝統型マスマーケティングの店舗販売のようにコミュニケーションと流通を関連付けられなくては、顧客との“関係形成”と戦略的な“反復・継続販売”はできないからだ。顧客の満足度と収益効率アップのためには、店舗流通と無店舗流通が、“一本化されて共有される顧客データベース”で、“「商流」(コミュニケーション)と「物流」を直結・連動”させなければならない。
13.メディア・フォーメーション
今日のマクロな領域のダイレクトマーケティングの目的(販売だけでなく、情報獲得、収益効率改善、顧客満足と顧客の長期維持など)を最大限に達成するには、一つのコミュニケーションメディアだけでは困難。“複数のメディアのそれぞれに“役割”を持たせて(ただしメッセージやイメージの一貫性は維持)、“有機的に連関”させた使い方(併行的・重層的、段階的・連携的)をする必要がある。そのような戦略が「メディア・フォーメーション」。私は、「リンク」「リード&コンバージョン」「フォローアップ」「サポート」という4つのフォーメーションを提唱している。
ここで言う「リンク」とは、“一つのメディアで発生した客との接触関係を別のメディアでのより進展した次元の関係に飛躍”させること。関係の出発点としてWeb/各種マス/Eメール/ダイレクトメール/カタログ/チラシ/テイクワンなど、帰着点としてWeb/IBテレマーケティングなど。
「リード&コンバージョン」とは、“ショートカットを狙わず可能性を段階的に絞り込んで行く” コミュニケーションの手法。一つのメディア(潜在市場には各種マス/Web/イベント、顕在市場にはダイレクトメール/Eメール/OBテレマーケティングなど)でまず「見込客」を顕在化、それを別の(同種/別種)メディアで「購入客・顧客」へと転換する。
「フォローアップ」とは、“データベースに基づいて同一のターゲットに同種/異種のメディアで継続・反復訴求しトータル効果を上げる”戦略。ダイレクトメール/Eメールなどで先行、ダイレクトメール/Eメール/OBテレマーケティングでフォロー。
「サポート」とは、複数のメディアを使用する場合その“どれか一つにレスポンスを集中発生させるため他のメディアにはそれを支援・促進するための役割を負わせる”手法。“メッセージを相関”させ“タイミングを合わせる”ことが肝要で、ダイレクトメール/テイクワン/新聞広告などを、テレビを初めとするマスメディアでサポートするのが一般的。
14.ハイブリッド流通
流通におけるマルチチャネル戦略のこと。「マルチチャネル小売」「リレーションシップマーケティング」「エージェントシステム」「ダイレクトピックアップ」という4つのモデルを私は提唱している。
「マルチチャネル小売」とは本来、流通小売業における“店舗販売とカタログ通販の連動”だったが、今はいわゆる「クリック&モルタル」と同義で、“店舗+Web”、“カタログ+Web”、“店舗+カタログ+Web”の3パターン。単に複数の販売チャネルがあるというだけでなく、“扱商品が共通”で“一つのデータベースを共有”し、顧客の方が“チャネルを選び、チャネル間の相互往来ができる”ことが肝要。(小著における「ファンケル」の事例)
「リレーションシップマーケティング」については、これまでも話してきたが、マスマーケティングではなかなか行き届かない“顧客の固定化と関係強化を、データベースマーケティングの手法を導入して補完”する戦略。マス広告の結果としてのレスポンスのデータベース化が必要だが、単純に入力するだけではなくて、精選と精度アップが肝要。(小著における「ネスレ」の事例)
「エージェントシステム」とは、ダイレクトマーケターとネットワークされていない小売店との共存システム。“ダイレクトマーケティングの一連の業務プロセスの中に、小売店が本来持っている機能(市場開拓、情報収集、アフターサービスなど)を組み込んで役割を持たせ、特性を発揮させる”ことによってWin-Winの関係を築く戦略。(小著における「アスクル」の事例)
「ダイレクトピックアップ」とは、私の仮称。無店舗個別直接宅送を流通の基本としているダイレクトマーケターの、ネット化されたコンビニ・チェーン利用による、“物流コスト合理化”のための考え方・システム。受注企業は、商品を直接宅送する代わりにコンビニまで送っておいて、発注者に明細をEメールで連絡し、発注者はそのメールに基づいて“コンビニで商品をピックアップし支払いも済ます”という方法。「ネットコマース」の場合に合理化の意味を持つ。(小著では簡単にコメントしているが、オンライン書店の「セブン&Y」が該当)
15.顧客情報収益化
ここで取り上げていることは、いわゆる「CRM論」とポイントはほとんど同じだが、それを実際に“収益”に結びつくものにするために、CRM論からもう一歩踏み込んだ“ダイレクトマーケティング的ポイント”について話をしたい。
顧客情報は、“受ける”だけでなく、それに基づいて“発信を行う”ことで生きてくる。“さまざまな顧客接点”で情報を取り込むとよく言われるが、先ずは「コールセンター」と「ウエブサイト」を開設し、「マルチメディア・コンタクトセンター」化するのが基本。そして、受けっ放しでなく、“インタラクション”がないと意味がない。
“収益化”のためには、ウエブサイトやコンタクトセンターを通じて得られる情報だけでは不十分で、“戦略的な顧客調査”を定期的に実施すべき。自社・競合ブランドの経験/商品やサービスについての満足度/その他さまざまな要望など、知りたい情報を能動的に聞き出し、情報の蓄積を厚くして、そこから潜在する問題点や事業・商品のヒントを発掘する。
当然のことだが、あらゆる情報はデータベース化されるべきで、顧客情報だけでなく自社の事業・商品に関する知識・情報(ナレッジデータベース)も構築。すべてのデータベースをすべての顧客接点で共有、検索できるようにし、顧客とのさまざまなコミュニケーション内容も、記録・整理し、解析(テキストマイニング)して、意味を引き出す。
CRMで読み取った情報は、そのままで客観的な可能性を持っているわけではなく、「ダイレクトマーケティング・テスト」によって可能性を検証することにより、初めて意味を持つ。情報を分析・解析して可能性の要因を発見したら、それに基づいて“仮説”を立て、市場(データベース)のサンプルに対するワントゥワンメディアでの「テスト」を行って、その仮説の可能性レベルを量的に(販売量・額のみならず採算性の点から)検証することが必要。
16.マクロ・ダイレクトマーケティングの課題
最後に、ダイレクトマーケティングが解決すべき課題について。
「顧客志向」と昨今は誰でも言うが、どれだけの企業がそれを真に実行しているか?かたちだけ対応窓口を設ける企業は増えたが、一消費者として接してみると、まだほとんどが自社本位で、効率優先体質は変っていない。企業の目先ではなくて将来のためには、顧客に対するサービス精神に思いを致し、そのためにコストをかけるべき。
「顧客プライバシー」を尊重し「個人情報保護法」の基本を守るのは当然。この規制によってダイレクトマーケティングが難しくなると考え、マイナス思考に陥るのでは創意が足りない。“コミュニケーション・スキルの発揮”が問題解決の鍵。顧客の不安感をなくすために、顧客に誠意を示し、顧客の共感(シンパシー)を形成する努力をすべき。そしてそのためには、コミュニケーション・スキル(表現・訴求技術)を磨き、かつ開発しなければならない。
ダイレクトマーケティングと「情報テクノロジー」(IT)は不可分だが、ITでどんな問題でも解決できるわけではない。効率・合理化だけを考えてデジタルシステムに過剰依存するのは問題。マーケティングの対象は根元的に“人”だから、“感情”と“アナログ”な部分を無視できない。
「原点への回帰」とは、ダイレクトマーケティングの基本理念である“企業・顧客間の相互信頼関係の構築”に、改めて思いを致すこと。この有無が企業の命運を左右する。これは、ダイレクトマーケティングだけに限らない。これを可能にするのは、顧客の「理性」の部分を満足させる、販売や流通面での“合理性”と同時に、顧客の「感受性」に訴える、コミュニケーションやサービス面での“創造性”。この両方を調和の取れた状態で発揮することが重要。
「マクロ・ダイレクトマーケティング」の総合課題は、結局、“人間性の発揮”ということになる。

Reference:
http://www.dm-gakkai.jp/event/forumdata/forum12-1.pdf

Unless otherwise stated, the content of this page is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License