△管理会計I by 植松 則行先生 (Managerial Accounting I by UEMATSU, Noriyuki)
授業情報
科目名 管理会計 I
担当教員 植松 則行
開講箇所 大学院商学研究科 配当年次 1年以上
科目区分 単位数 2
講義概要
この科目では、企業の内部で経営管理のために数値を使っていく管理会計についての基礎を学んでいく。通常、管理会計には、投資案件の評価や製品の価格の設定といったさまざまな意思決定に関連して数値データを活用していく「意思決定会計」といわれる分野と、部門別、製品別、地域別、営業担当者別といったさまざまな区分ごとに数値データを集計し、経営管理に活かしていく「業績管理会計」という分野がある。この科目では、この2つの分野について、重要だと考えられるポイントを網羅していく。さらに管理会計と関連する分野で、ここ20年間に生み出された手法であるABC、EVA、BSCの3つについても扱い、企業価値経営との関係も解説する。
シラバス
(授業計画)
1 管理会計とは何か
2 コストの意味(変動費と固定費、直接費と間接費、製品原価と期間原価)
3 短期的意思決定(限界利益、限界利益率、外部環境との連携)
4 損益分岐点分析(損益分岐点売上高、安全余裕率、目標利益を達成するための売上高・コスト削減額)
5 長期的意思決定(キャッシュフロー、割引率、NPV法、IRR法、回収期間法)
6 標準原価計算(標準原価、実際原価、原価差額、差異分析)
7 直接原価計算(変動費と固定費)
8 ABC(直接費と間接費、コストドライバー、ABM、ABB)
9 組織のコントロールの仕組み(組織の形態、移転価格、本社経費)
10 予算管理(計画、調整、統制、予算の種類、実績との差異分析)
11 財務目標の設定と浸透(ROE、ROA、売上高、営業利益率)
12 EVA TM(NOPAT、ROIC、資本コスト、選択と集中、VBM)
13 BSC(戦略マップ、KPI、戦略志向の組織体、報酬とのリンク
14 企業価値向上へ向けた管理会計諸要素
15 まとめ
教科書 ハンドアウトを配布
参考文献 西山茂著「戦略管理会計」ダイヤモンド社
櫻井道晴著「管理会計」同文舘
成績評価方法 レポート(1回) :30%
試験(2回) :50%
出席及び発言 :20%
備考
非常勤講師略歴:1960年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業 公認会計士。デロイトコンサルティングの元パートナー。現在、公認会計士 植松則行事務所。監査法人トーマツ、米国デロイト&トウシュLLPとデロイトコンサルティング(現在のアビームコンサルティング)で会計監査及び財務・戦略コンサルティングの豊富な経験あり。研修会の講師経験も豊富。
講義メモ
1 管理会計とは何か
経営判断を支える会計
2 コストの意味(変動費と固定費、直接費と間接費、製品原価と期間原価)
コストの推移、コストの価値
3 短期的意思決定(限界利益、限界利益率、外部環境との連携)
限界の意味
4 損益分岐点分析(損益分岐点売上高、安全余裕率、目標利益を達成するための売上高・コスト削減額)
損益分岐
5 長期的意思決定(キャッシュフロー、割引率、NPV法、IRR法、回収期間法)
キャッシュの真実、ファイナンスの考え方
6 標準原価計算(標準原価、実際原価、原価差額、差異分析)
原価の構成、形成
7 直接原価計算(変動費と固定費)
伝統方法
8 ABC(直接費と間接費、コストドライバー、ABM、ABB)
科学進展によって精密計算する原価
9 組織のコントロールの仕組み(組織の形態、移転価格、本社経費)
組織を制度と指標で動かす
10 予算管理(計画、調整、統制、予算の種類、実績との差異分析)
予算と現実
11 財務目標の設定と浸透(ROE、ROA、売上高、営業利益率)
財務指標とのつながり
12 EVA TM(NOPAT、ROIC、資本コスト、選択と集中、VBM)
株主の評価
VBM(価値創造経営) Value Based Management
資本市場を意識した上で、企業活動のすべてを、企業価値向上へ向けた取り組みに整合させることが求められる。
VBMは、日本語で価値創造経営と訳されますが、本来の意味としては「価値基準の経営管理」とするほうがより正確です。価値基準としては、米国スターン・スチュワート社が開発したEVA(経済付加価値)が注目を集めています。
経営管理の指標はEVAに限らず、キャッシュフローや、ROEなど、様々なバリエーションがありえます。重要なのは、各社が決めた経営指標を恒常的に改善させるべく、企業活動のすべてが整合されている、ということです。
社内資本市場のアプローチ
VBMを推進する効果的な方法としては、社外資本市場と同様に社内資本市場を構築するアプローチがあります。例えば、カンパニー制の組織体制を敷き、社内資本金を設定するといった方法です。
この場合、本社はカンパニーにとって資本(投資)家であり、カンパニー長はその資本を最大限に活用し、投資家の期待収益率を上回るリターンを創出しようとします。その結果、全社が目指す価値が向上するというメカニズムが働きます。
社内資本市場におけるガバナンスを一層強化するためには、カンパニー長が担当しているカンパニーの業績向上に強烈なインセンティブを持たせることも効果的です。
カンパニーと全社のバランス
例えば、カンパニー長の報酬のうち業績連動部分を大きくすることにより、メリハリの利いた報酬体系を実現できます。分権型で多角化型の経営を目指すのであれば、カンパニー長の報酬は担当カンパニーのみの業績連動にし、集権型の経営モデルならば、担当カンパニーの業績連動部分に加えて、全社(コーポレート)の業績連動部分を設けることにより、カンパニーと全社にとって最適な行動をとることができます。
実際に、ソニー、HOYA、花王といった、いくつかの先進企業がこのようなVBMの体制を構築し、運用しています。
これらの経営管理が効果を発揮するか否かの判断にはもう少し時間が必要ですが、少なくとも「資本コスト」や「投資家の期待収益率」という概念が日本企業にもようやく浸透し始めたといえるでしょう。
13 BSC(戦略マップ、KPI、戦略志向の組織体、報酬とのリンク
総合的に管理
14 企業価値向上へ向けた管理会計諸要素
総合
15 まとめ
まとめ
参考図書:
管理会計(第三版) 櫻井通晴
バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革 キャプラン(Robert S. Kaplan)
ソフトウエア管理会計 IT戦略マネジメントの構築 第2版 桜井通晴