Nikkei 2008 04 16

テレビ事業、ビクター、国内撤退、欧米に経営資源集中――デジタル家電、淘汰の波。2008/04/16, , 日本経済新聞 朝刊, 1ページ, 有, 970文字

 薄型テレビで国内六位の日本ビクターは今夏をめどに、国内向けのテレビの生産、販売から撤退する方針を固めた。急激な価格下落が続くなか、採算を改善するのは困難と判断、今後は欧米向けテレビに経営資源を集中する。人口減少などを背景に日本市場の成長鈍化が鮮明になるなか、すでに三菱電機や三洋電機が携帯電話機からの撤退を決めた。過当競争が続いてきた国内デジタル家電メーカーの淘汰の波が主力製品のテレビにも広がってきた。(関連記事13面に)
 国内大手テレビメーカーが日本市場から撤退するのは初めて。ビクターは二〇〇七年に世界で百万台程度の液晶テレビを販売、このうち三十万台弱を国内向けに出荷した。国内での売上高は三百億円程度。大手電機を中心に十社以上が競う日本は海外に比べ収益環境が厳しい市場になっており販売規模で劣るビクターは苦戦していた。
 同社は国内薄型テレビ市場でシャープ、松下電器産業、ソニー、東芝、日立製作所に続く六位を占めるものの〇七年のシェアは二・九%に縮小。同事業の不振で〇八年三月期の連結業績は四期連続の最終赤字となった見込みだ。今秋予定のケンウッドとの経営統合を軌道に乗せるためにも赤字の国内事業からの撤退が不可欠と判断した。
 横須賀工場(神奈川県横須賀市)でのテレビ生産を全面停止する。営業を含め国内テレビ事業には数百人程度がかかわるが、他事業への配置転換などで雇用は維持するとみられる。販売済み製品の保守・修理などは継続。欧米での事業は海外市場に強い船井電機と相互生産委託などの提携を進め競争力を高める。
 ビクターは一九三九年に国内で初めてテレビ受像機を開発、カラーテレビやVHS方式のビデオデッキの事業化でも先行してきた実績を持つ。しかし薄型テレビでは巨額の設備投資が必要な液晶パネルの生産を台湾メーカーなどに依存。独自の技術力を発揮する余地は限られていた。
 国内電機業界では今年に入り三洋電機と三菱電機が携帯電話機、東芝が新世代DVD規格の「HD―DVD」対応機、パイオニアがプラズマテレビ用パネル生産からの撤退をそれぞれ決めた。
 中国など新興国の急成長で世界市場の拡大が続く一方、日本は成長が鈍化。日本向けを中心としてきた国内電機メーカーは事業採算が悪化している。今後、テレビ事業の見直しがビクター以外に広がる可能性も強い。

東急電鉄、稼げる流通へ急行、“放任”路線を転換――ストア、駅ビル出店を加速。2008/04/16, , 日経MJ(流通新聞), 1ページ, 有, 1312文字

 東京急行電鉄がリテール事業の抜本的なてこ入れに乗り出した。業績が低迷していた東急ストアを七月に株式交換で完全子会社化するとともに上場廃止する。既に完全子会社の東急百貨店では、提携先の伊勢丹から社長を迎える。沿線土地販売による「含み益経営」は限界に近づいた。「第三のコア事業」と位置付けるリテール各社を電鉄の統制下でフル活用し、収益を持続的に生み出す狙いだ。かつての「自由放任」からの路線転換は実を結ぶのか。(関連記事5面に)
 十日、東京・品川の東急目黒線西小山駅。雨が降りしきるなか、東急ストアの新業態「フードステーション」が駅ビル内に開業した。夕刻、入り口付近の総菜コーナーは会社帰りのOLらでごった返した。
 売り場面積は約六百平方メートルと標準店の半分以下。品数も六―七割に絞り込み、閉店時刻も終電に連動させる初めての試みも始めた。今後も駅ビルなどの「電鉄案件」で多店舗化する方針。ストア関係者は「電鉄の一〇〇%子会社になるのは、こうした連携を強固にするためだ」と強調する。
 だがシナジー追求だけが完全子会社化の理由ではない。「スピードを重視する」(東急電鉄の越村敏昭社長)電鉄にとって、ストアの低迷が続くのは見過ごせない事態だった。ストアは〇八年二月期の営業利益が前の期比一一・五%減、最終損益は店舗の減損処理などに伴い、七十億円の赤字に転落する見通しだ。
 〇八年二月期の既存店売上高は前年比一・七%減の見込み。売り上げが堅調に推移しているマルエツなどの競合スーパーに大きく見劣りする。既存店売上高の前年割れはすでに十年以上続く。
 「上質化」――。ストアは産地や品質にこだわった高付加価値商品を前面に打ち出し、集客を図ってきた。ただ高所得層が多く住む東急沿線では奏功したものの、沿線外では売り上げは伸び悩んだ。高級化を推進した戦略業態「プレッセ」も「黒字店は非常に少ない」(越村社長)状況だ。
 「価格訴求が弱い」と競合が指摘する弱点にはストアも手を打ちつつあった。昨秋から低価格路線に方針を転換。メーカーが値上げに踏み切った食品をあえて値下げするなどの施策が奏功し、「九月―二月は客数も回復傾向」(ストアの高橋一郎社長)にあった。
 ストアにとっては自助での改革に水を差されたといえる今回の完全子会社化・上場廃止のタイミング。電鉄との話し合いは「スムーズにいった」(越村社長)という一方で、「ストア幹部の反発もあった」(関係者)とささやかれる。
 今後、店舗改革を電鉄が主導することで、電鉄案件の「フードステーション」が出店戦略の軸になるほか、総合スーパーの不採算売り場を電鉄が引き取ってテナントを導入する活性化策も進む。一〇年度に予定する東急田園都市線たまプラーザ駅近くの再開発では、百貨店とストアを連携した出店構想もある。
 ただ「既存店の人員配置の見直しや大規模な店舗閉鎖まで踏み込まないと収益改善効果には乏しい」(国内証券アナリスト)との指摘もある中で、「業態転換がメーン」(越村社長)と強調する緩やかな改革で成果が上がるかは不透明だ。
【図・写真】完全子会社化で、東急ストアは自助での改革に水を差された格好となった

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